ボール





壁のない暗闇へ投げるボール



どんなに投げても決して返ってくることはない








昔、空き地の外れで暗くなるまで夢中で投げ続けた



投げれば必ず返ってくるから



一人でも楽しくて仕方なかった



不安もなく自分も忘れただひたすら投げ続けられた








だけど投げたボールは音もなく暗闇へ吸い込まれ



わたしはただその虚空をみつめるばかり









投げたボールはどこに溜まっているのだろう



暗闇の先は暗闇で決してなにもないのに



何故かそんな心配ばかりしてしまう








ボールがなくなりそうだ



買ってこなくちゃ



どこに行けば売ってるのかな



売ってくれるのかな









考えながら夕方の川縁を家路へと急ぐ



この先はどこに繋がっているのだろう



考えもしなかった想像で胸が一杯になってしまう私は



もう、あの川縁を歩いた子供ではないのだろう